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新潟大学教育人間科学部の長澤です。 30分という短い時間なのでちょっと早口になりますし、わかりにくいかと思いますが、なるべくポイントを絞ってお話ししたいと思います。
「障害の新しいとらえかた」
最初に障害の捉え方についてごく簡単にお話ししたいと思いますが、障害のある子どもの捉え方として、こういう丸(図を参照)が欠けた状態というふうにして以前は捉えていたと、つまり障害児というのはこういう欠陥がある子どもなんだという捉え方をしていたわけなんです。それをを改善するためには、今は無くなりましたけど手術とかリハビリとか何か治療することによって、まあこんなふうになるだろうと、例えば目が見えない人に角膜の移植をすると見えるようになるケースがあります。というのは今のように治すという考え方がピッタリあてはまるわけですね、ですから障害というものは治すものだと、改善するものだという考え方が昔は当たり前のように支持されてきたわけなんです。
その他に、欠けていますが赤いものが入っています(図を参照)、まったく同じ大きさのものですからピッタリあてはまるわけです。そうすると、ちょっと色が違ってますけれどもやはりキチンとした丸になっています。こういう赤い丸の部分を、私たちは支援と呼んでいるわけです。ということは障害のある子どもというのは欠陥があるとみるのではなくて、こういう支援をしてあげればいろんなことができるようになるだろうという捉え方、決してどこか欠けてるとか曲がってるとか悪いということではなくてこのようなもの、ピッタリあてはまるもの、小さすぎても大きすぎてもダメで、ピッタリあてはまるものを入れてあげれば日常生活がみんなと同じように送れるということです。この赤い部分を支援ということです。
そこでこの支援というものを具体的に保障すること、「やってあげますよ」「手助けしてあげますよ」と口約束でもいいんですけど、大抵その口約束というのは果たされずに「そんな約束しましたでしょうかね?」ということになりますので、今の世の中は文書として残すことが一般的になっています。そのいい例が契約書だと思います。「こういうことをやってください」「わかりました」サインをします、そういうことです。
アメリカの個別教育プログラムの場合には契約書の性格が非常に強くて保護者の親のサインが求められますし、計画書通りに先生がやらないと訴えられるような、すごく法的な強制力が強いものです。日本の場合にはまだそこまでいっていませんが、子どもの不利益にならないように保障するものとして個別の指導計画を作成していきます。
定義を言えば子ども一人一人のニーズに基づく指導の個別化を具体的に計画したもの。つまり、さっきの赤い丸というのは子どもによって大きい・小さい、質、量とも違うわけですので、たくさん援助が必要な子どももいればほんのちょっとで済む子もいる、複数の支援が必要な子どももいればひとつだけで済む場合もあるというように、子どもによって千差万別ということですから、それぞれの子どものニーズに基づいて作成しなければならない、だから個別の指導計画、個別に作られる指導計画だということです。 法的な根拠は新学習指導要領の中に、「自立活動」と「重い子どもの指導」に限定して義務づけています。ですから特殊学級に在籍している自閉症のお子さんの担任の先生が「私は作りません」と言っても法的には違反ではないんです、残念ながら。自立活動を行う場合と、重い子どもの場合に義務付けられているということです。しかし、調べてみると、知的障害養護学校とか、知的障害・情緒障害特殊学級でも個別指導計画の必要性を支持しておりますし、もう80%から90%のところで作っています。ちなみに新潟市の場合では「作っていない」という学級はないと思います。養護学校でも、個別の計画を作っていないという養護学校はないはずです。必ずその学校独自のものを作っています。
「個別の指導計画」
これから私が話した後で、グループに分かれて個別の計画を作っていただくことになるんですが、大体こんなことが盛り込まれているようです。順番に見ていきたいと思います。
「実態把握とニーズの調査」
まず、子どもの実態を把握するということで、どんな子供なのか?二つ目はどんなことが必要か?という、ニーズの調査というものをします。
そのためにまずよくやられるものとして、知能検査、WISCだとかK−ABCとかビネーの検査をします。他にもいろんな心理検査・発達検査があります。知能検査が難しいお子さんの場合には発達検査の遠城寺式とか津守式とかの発達検査がありますし、社会生活能力検査というものもあります。知能検査に比べれば実施が非常に簡単ですので、けっこう学校では広く行われているようです。他に学力、国語、算数といった学力がどれくらいあるのかといったことを調べたりしますし、行動観察によってどんな時にパニックを起こすとか、どんなものにこだわっているかとか、どういう遊びが好きだとか、そういったものをみていきます。
カウンセリングと書いたのは、こういったものを調べる時に事情聴取をするみたいに「好きなものは?」とするよりも、むしろ親とカウンセリング的な雰囲気の中で聞き取った方がいいだろうという意味でカウンセリングと書いたわけです。 ニーズの調査ですが、最近は保護者・親の願いというものを学校も大事にしてきているようになっています。いい傾向だと思います。保護者の願いとあわせて教師の願いというのも必要になるかと思います。もっとも大事なのはやっぱり子どもの願いだろうと、親の願いでもなく教師の願いでもない、子どもの願いだということです。ADHDや高機能の子どもなどは、カウンセリング的なやりとりの中で「君はどんなふうになりたいの?」というような聞き方をすることがあります。誰々さんと友達になりたいとか、みんなから嫌われないようになりたいとか、これが本人の願いですね。やはり話せる子には、本人の願いを聞く保障をしてやることが大事だと思います。
「長期目標」
今のは長期目標といいまして、大体一年間を視野に置いた目標といえます。子どものニーズに基づいて設定する長期の見通しに立った目標、だから今すぐ出来なくてもいいわけです。こういうものに近づいてくれればいいぞ、ということですから教師からすると指導の方向性を示します。こんな子どもにしたい、自分はこういうふうに指導するんだという方向性を示します。学校の場合には、やはり一年毎に見直した方がいいだろうということなので、大体一年後こういうふうになってほしいというような期間で取り組みます。
長期目標を立てるとその次に短期目標という具体的な目標を立てることになるんですが、これがなかなか難しい作業だと思います。長期の目標は言い換えると理想であり、願いであり、夢なんです。極端な話、達成されなくてもいいんだと。この夢に向かって一歩でも近づけば、それでまあまあいいんだろうと考えていただきたいと思います。しかし短期目標というのはやはり確実に達成しなければいけないものです。「ちょっと近づいたから良かったですね」じゃあ済まない。では、長期目標から短期目標を設定するためにどうすればいいのかということなんですが、この「長期目標」は夢ですから、夢がかなったと感じる時はどういう状態の時かをちょっとイメージしてみます。 例えば、夢=たくさんの人から好かれたい・モテモテになりたい、これは長期目標らしいと思います。じゃあモテモテになったと感じる時はどういう時か、人それぞれ違うと思うんですけれども、例えば1日10人くらいから声をかけられるとか、そのうち半分以上が異性であるとか、話す内容がこうだとか、一緒に食事をするとか、いろんなことがイメージできると思います。その時に考えられることをたくさん出してみることが大事です。 これから個別の指導計画を作る時に長期目標をたてます。達成されたと感じる時はどんな時かを、まず沢山出してみます。参加者から沢山出してもらいます。なかにはちょっと妥当でない目標も出ると思います。それでも構わずに取り上げます。ですから出たらホワイトボードに書くという作業をしてもらいます。けっして人が話したものを「それ、おかしいんじゃない?」とか、「早すぎるんじゃない?」とかいうふうに言わないでいただきたい。心のなかでは「ちょっとバカげているんじゃないの?」と思っても言わないということです。とりあえずは沢山出すということです。
「長期目標から短期目標を考える」
長期目標を具体化するときには、できそうなことを沢山出してもらいます。そして10分なら10分、好き放題話をする、言いっぱなしにする、そしたら子供が出来そうなことを順番に並べます。目標が出た、すごく難しいものもあれば、「あ、これもう出来てる」というようなものもあります。ですから簡単なものから難しいものへ順位を付けます。あるいは必要度が高いものを優先順位の1位にします。1・2・3・4・5・6…、と順位を付けていって「可能なことからはじめる」ですから、これを短期目標の1にするということになります。すごくやさしいものから1位にするということです。なぜかというと簡単な目標なので、すぐ出来ます、ひょっとしたら明日すぐに出来るかも知れない、ということは子供を誉めてあげることが出来ます。「できたじゃない!」と誉めてあげられる、自分自身もうれしいわけです。「この目標クリアしましたよ」と親にも報告しやすいです。これを、最初に非常にハードルの高い目標にしてしまうと1学期やっても全然進歩がない、となるとだんだんくじけてきますし、子供に「なんでできないの?」「ちがうでしょ」というようなことを言ってしまいます。そういうことは子供にとってもやる気を無くすことになってきますので、出来ることから始めて出来たら次の目標というふうにどんどんあげていくというようなやり方がいいです。
「短期目標(具体目標)」
短期目標は言い換えると具体的な目標です。曖昧な表現を避けます。長期目標を達成する為に必要な具体的な目標、曖昧な表現は避ける、観察可能な表現で書くということです。
例えば、「おはよう」と挨拶をする、これは観察出来ます、したかどうかチェック出来ます。人に見られないように着替える、これも観察出来ますしチェック出来ます。恥ずかしいという概念を育てるというようなことは、出来たかどうかというのは観察出来ません。羞恥心を覚えるというようなことも観察出来ません。あとは人との関わりのなかでの最低限のルールを覚えるなんていうのも観察するのは難しいです。ようは複数の人間から見て、その子が出来たか出来ないか、意見が分かれるような目標の設定はするな、ということです。ある先生は「出来ている」とみなし、ある先生は「出来ていない」とみなす、親はまた違った意見を言う、というような目標は最初から作っちゃいけないということです。となると何回出来るとか、何パーセント出来るとか、何分座っていられるとかいうふうに出来るだけ数値化することも大切かと思います。ようは何が出来るようになるといいのか、はっきり決めていただきたい。「最後まで作業を頑張る」というのは、じゃあ何の作業をどれだけ出来ればいいのか、ということです。「思ったことを作文に書ける」というのも、何のことを何文字くらいにまとめて書けるようになればいいのか、ちょっと理屈っぽく考えてみられると短期目標が具体的になってきます。
「指導方法」
とにかく今日はここまでの部分を順々に見られるといいと思います。もし短期目標まである程度出来たという場合には、この短期目標を指導する為に、どんな指導方法が考えられるかというのもアイデアを出し合うといいと思います。
例えば「場面設定」、どんな場面で教えますか?さっき出ていた「人に見られないように着替える」というのはどんな場面で指導しますか?まさか国語じゃあないですよね。当然、小中学校であれば体育の時間とか、プールの時間、というふうに場面が限定されてきます。これは学校よりも家庭で教えた方がいいですよね、着替るというのは。
「教師の働きかけ」は、どのように教えますか?どんなふうに教えますか?ということです。
次に「教材・教具」、何を使って教えますか?広汎性発達障害の子供の場合には視覚的手がかりが有効だと広く知られていますので、例えば絵カードを使うとか写真カードを使うとかチェックリストを使うとか目印を付けるとか、そういった教材・教具が必要になると思います。
「うまくできた時、できなかった時の対処法」、例えばうまくできたときは、誉める・ご褒美を与える。広汎性発達障害の子供の場合には、言葉で誉めるよりもやはり具体的なものとしてご褒美をあげるというやり方が非常に効果があります。その都度おやつをあげるというやり方もありますけど、そうすると太る可能性もあります。従いましてよくやるのは、トークンです。ポイントを与えて、ある程度たまったら好きなものと交換できる。ポイントがたまったら、パソコンを30分やってもいいよとか、そういうようなことを使います。トークンはどの子にも効果があります。なかには「取引しているみたいで嫌だ」という方もいますけど、良いことをするというのを具体的に知るという方法ですから決して取引ではないということです。それと、トークンを用いる場合には少しのポイントでもらえるものからなかなかもらえないものまで、グレードを付けるということを是非やっていただきたいと思います。10ポイントでチョコレート、100ポイントでなにか、1000ポイントでゲームソフトというように5段階くらい差を付けるといいようです。どうしてかというと、目の前の楽しみを我慢して将来の楽しみを獲得するという訓練にもなりますので。特にADHDやアスペルガーの子供には、私は是非必要なトレーニングだと思います。最初は10ポイントですぐカードと交換していた子供が、カードというのを我慢して1000ポイントのゲームソフトに挑戦するというのは我慢する訓練としては非常に妥当だろうと考えます。じゃあ集めると何かと交換できるというのが分からない、知的な遅れがあってシールが10ポイントたまるとおやつと交換できるというシステムが分からない子供の場合はどうしたらいいのかということですが、ひとつのやり方としては、もらえるものの絵カードを4分割して、良いことをやったら4分の1を与える、また良いことをやったら4分の2、というように4つ揃うと欲しいもの、絵カードと同じになる。それを持っていくと同じものがもらえるというやり方ですから、これは言葉の理解が難しいお子さんにも使えると思いますし、現に成功した例がいくつもあります。これはうまく出来た時のやり方で、トークンシステムというのが非常に良いやり方だと思います。
では出来なかった時は、やってみせる・手をかける・注意するなど。どの程度までお手伝いするかというのをあらかじめ決めておいた方がいいと思います。そうじゃないと、お父さんはいっぱい手をかけるけどお母さんはかけないとか、先生はあまり手をかけないけど同級生は女の子は徹底的にやってあげるとか、そのへんのガイドラインはちゃんとしてあげた方がいいと思います。
「いろいろな指導場面」
いろいろな指導場面と言いましたが、学校のなかでは授業、国語・算数・生活単元学習、休み時間などいろいろありますが、これはけっこう指導場面として有効なんです。子供はやりたがっていきいきしていますので「ちょうだい」の指導などはとても有効です。あとは個別指導の時間。家庭においては遊び・お手伝い・食事・入浴・挨拶、これは毎日必ずすることですから、かっこうの指導場面ですよね。挨拶というのは国語の時間にやるよりも朝夕の寝るとき・起きたときに教えるのが一番いいわけですし、体をこするというのは入浴の時間に教えるのがいいわけです。他にも塾・サークル・おばあちゃんの家・レジャー施設でも、教える機会がたくさんあります。こういうのはとってもいいわけです。なんでかというと目的がはっきりしています。塾へ何をしに行くか、言わなくても分かります。レジャー施設へ何をしに行くのかも分かります。プールへ行くと何をするのか、重い自閉症の子供でも分かります。そこで教えるものが限定されてきて特定化されやすいということです。
「全体で配慮すべきこと(参考)」
今日はちょっと覚えていって欲しいんですが、他に個別の指導計画としては「全体で配慮すべきこと」として、「学校全体で配慮すべきこと」「学級全体で取り組むべきこと」を検討することがいいと思います。
例えば1年1組のアスペルガーの子供がいたとします、そうすると2年生の先生や6年生の先生は関係ないと、「私は6年生の担任だから1年生は関係ない」とおっしゃるんですが、例えば校庭でパニックを起こしていたとか、授業中に逃げていったとしたら、先生が目撃したら何をすればいいのか、必要最小限のことをここに書くわけです。パニックを起こしていたときには、静かな部屋に連れていき事情を聞いて欲しいとか、そうしないと間違った対応をしてますますひどくなるわけです。ですから関係ないと言わずにここの学校の職員であれば最小限知っておくべきことをこの項目に書きます。
それから「学級全体で取り組むべきこと」は、他の児童生徒へどう指導するかということです。
人前で服を脱ぎ始めた、みんながワーッと騒ぐ、ますますエスカレートします、ですから「○○ちゃんが人前で服を脱いでも騒がないで」といったものを書いておきます。これからこういう通常学級に発達障害の子供が入ってきますと、当然他の子供達にどう教えるかということも教師の重要な課題となります。ですからこういった項目を作って、他の子供にどう教えるかを事前に考えておく必要があります。
「評価日(参考)」
これも参考までにお話しますが、短期目標で指導される目標をいつまでにやるか、タイムリミットはいつなのか、こういうのを決めておかないと「そのうちできるでしょう」では、気づいたらもう小学校6年間が終わっていました、ということにもなりかねません。従いまして、だいたいここまでに出来るようにしようという目標を決めます。
短期目標は1学期をめやすに評価します。そのためにもできるだけ記録を取ります。チェックリストを作ってチェックしていくことも考えられますし、教科学習の場合にはテストをして今回は30点取れたというようなことも出来ます。どんな子供にも使えるのがビデオです。私がよく勧めるのは小学校に上がったときにまず子供に好き放題させて、危なくないようにさせて、それをビデオにずっと撮っていくわけです。そして1学期が終わった頃にもう一回同じ場面で撮ると、どれだけ変わったかということが分かるわけです。そういうポイント・ポイントを決めてビデオに同じ場面を撮って見比べてみると、子供の成長がどんな子供についても把握できるかと思います。
評価するというのがどういう意味があるのかというと、子供の成長を見ることと、自分がやった指導の効果を測定するという目的があります。ただただ、子供がどうなったかということではなくて、自分がこうやったという指導が果たして子供にとって良かったのかどうかという評価をしなければいけないということです。
「個別の指導計画と個別の教育支援計画」
「個別の指導計画と個別の教育支援計画」という、またややこしいものが出てきましたけども、今日作っていただくのは「個別の指導計画」です。一人一人のためのもので、何をどう教えるかというのが指導計画です。これから特別支援教育が行われるにあたって作成されるであろうと言われるのが「個別の教育支援計画」です。では違いは何かというのをお話しますと「個別の指導計画」は、小学校・中学校・高等学校、こういう学校や学部の単位で作るものです。従いまして、ここに連続性が見られないんです。薄いんですね。その学校独自・学部独自でやってしまいますので、連続性に問題があります。それに対して「個別の教育支援計画」は幼稚園・保育園から社会に出るまで連続した支援を保証する文書だと考えられています。幼稚園でやったものを小学校、小学校でやったものを中学校というように、生涯にわたって支援するものを保証する文書になります。
そのなかには個別の移行計画というものがあって、これはようするに個別の進路指導計画です。子供が将来どういう仕事に就いて、あるいはどういう学校を選んで、どういう仕事を選んで、将来どういう生活をするかを中学校くらいから考えましょう、ということです。ですから個別の教育支援計画のなかに移行計画も含まれるというふうに考えていただいてけっこうです。2つの要素が入っていて非常に心強いものです。
「ポイント」
個別の指導計画を作成する場合にポイントがいくつかあります。「作りやすい」こと、作るのに1学期間かかりましたというのでは本末転倒なんですね。そのうちに子供がどんどん変わっていって目標が合わなくなっていた、ということもあり得ます。ですからとにかく作成しやすいもの。2つめのポイントとして「使いやすい」こと、出来て、大事に金庫に眠らせておくというものでは困ります。あとは「あ、この目標おかしかった」というときに「修正しやすい」ということです。従いまして、手書きよりもワープロ・パソコンで作ると修正しやすいです。それから「効率よく」というのも大事です。やはり、時間をかければいいというものではないです。まずパーッと作ってみて、やってみてダメだったら修正、というくらい機動力があった方がいいと思います。練って練って慎重に慎重を重ねて、出来たときには秋風が吹いていたというのはちょっと洒落になりませんので、まずは作るということです。一人で悶々として作るとあまりいいことはありませんので、出来るだけグループで作成する、話し合うことです。ここで大事なことは問題解決を最優先するということです。何か意見を出すと「出来なかったらどうするの?」とか「それはこういう問題点があるんじゃないの?」と、必ず足を引っ張りたくなります。何か目標を出した、「それは先生が今までやってこなかったのが悪いんじゃないですか?」となると、その後泥沼になりますので、そうじゃなくて、この目標を達成するためにどうしたらいいかという未来だけを見てやっていただきたいということです。過去のことをあーだこーだと言ってもしょうがないわけです。従いまして、話し合うときのポイントとしては、人の足を引っ張るような意見はなるべく言わないことです。ただ、「この子の特性から見てこの目標はどうしても合わないと思いますよ」とかそういうのは言っても構いません。こんなふうに個別の指導計画を作るというのは情報の共有をするということになります。ひとつのこういう文書を家庭や学校・職員のあいだで共有するということなんですね。同じように指導できますし、共通理解が具体的に保証されます。ともに体験することが出来ます。ですからこれは必ず必要なものと考えていただきたいと思います。
簡単でしたけれども、以上で私からの説明を終わります。
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